排尿障害
排尿障害
膀胱と尿道(男性の場合は前立腺を含む)、および尿道括約筋で構成される下部尿路には、尿を貯める機能(蓄尿機能)と尿を排出する機能(排尿機能)があります。これらの機能が障害された状態を排尿障害といいます。
正常な排尿とは、「尿意が生じてから我慢ができ、速やかに排尿が始まり、途切れず進行し、膀胱に貯まっていた尿が完全に排泄されている」という状態です。
この一連の過程が乱れてしまうことによってさまざまな症状が引き起こされます。
前立腺肥大症は、前立腺の病気のなかで最も頻度の高い病気です。前立腺が肥大して様々な排尿障害が生じてきます。前立腺は直腸と恥骨の間にあり、尿道を取り囲んでいます。そのため前立腺が肥大すると、尿道を圧迫して排尿に関わる症状が現れます。一般的な成人男性の前立腺は、クルミぐらいの大きさと例えられますが、肥大するとみかんや卵ぐらいの大きさになります。
治療は薬物療法、手術療法などが主ですが、中間的な治療法として、前立腺高温度治療(前立腺の組織を温めて、組織を変性、縮小させる治療法)があります。
精液の一部を作る前立腺という臓器に何らかの炎症を起こした状態です。排尿時の痛み、尿が近い、尿を出しづらいといった症状を伴うことがあります。検尿、エコー検査などを行い、内服薬、点滴で治療します。
神経因性膀胱とは、読んで字のごとく、神経障害に起因する膀胱障害のことです。すなわち、神経の疾患により膀胱の収縮や弛緩を制御する神経が障害を受けるために、膀胱の働きが障害される状態です。膀胱の収縮が障害された場合には、うまく尿を出せず、排尿症状を中心として様々な症状を引き起こします。原因疾患としては、糖尿病による末梢神経障害、腰部椎間板ヘルニアや脊椎管狭窄(せきついかんきょうさく)症による神経の圧迫、子宮がん・直腸がん手術による神経の損傷などがあります。
加齢の変化で骨盤底の筋肉が弱くなり、子宮や膣壁が正常の位置より病的に下垂する病気です。進行すると膣外に子宮、膣、膀胱、腸管などの臓器が排出される状態になります。更年期以降の女性に認められ、お産経験がある女性の約半数に生じるともいわれています。
軽度では自覚症状がなく、進行すると尿失禁や頻尿、異物感などが生じてきますが、脱出部位により、症状は様々です。治療は体操(骨盤底筋訓練)、ペッサリー(膣内に器具を入れて下垂を抑える)療法、手術療法があり、症状や年齢によって選択されます。
普段服用している薬剤の副作用として排尿障害が見られるものがあります。
膀胱の収縮活動がコントロールを失い、膀胱に尿が十分にたまっていない少ない段階から膀胱が勝手に収縮してしまう病気です。頻尿はもちろんですが、尿意が頻発し我慢することができず、漏らしてしまう切迫性尿失禁などが発生します。脳や脊髄の病気、前立腺肥大症、加齢、ストレスなど原因は様々ですが、原因がはっきりしないケースも少なくありません。
他の病気の可能性も含めて、問診や検査を行います。生活習慣の見直しで改善することがあるので、薬による治療だけでなく生活習慣の見直しや指導を行います。
残尿とは、排尿後も膀胱内に尿が残る状態で、前立腺肥大症や神経因性膀胱による排尿障害の結果として発生します。膀胱内に残尿があると、結果的に尿を溜められる膀胱の容量が少なくなり、何回もトイレに行くようになります。
肥満の人に多い高血圧や糖尿病は膀胱や前立腺などの排尿に関係する下腹部の骨盤周囲臓器に血流障害を引き起こし、膀胱の容量を低下させます。膀胱のサイズが小さくなることで頻尿の症状が見られます。
女性に多く、頻尿、血尿、排尿時の痛みが特徴的な病気です。多くは排尿の最後のほうや排尿後にしみるような不快な痛みを感じます。悪化してくると残尿感がひどく、何度もトイレに行くようになり、はっきりとした痛みを伴うこともあります。膀胱炎は何らかの原因で尿道から細菌が膀胱へ侵入することによって起こります。一番の原因となるのは大腸菌ですが、通常は抗生剤治療で数日以内に完治することがほとんどです。膀胱炎は放っておくと腎盂腎炎(じんうじんえん)を併発してしまうこともありますので、症状を感じたら早めの受診をお勧めします。
膀胱に石が溜まってしまう病気で、尿の流れが途中で中断され排尿が困難になる、特定の姿勢でしか排尿ができないようになるなどの症状が見られます。
前立腺肥大症や尿道狭窄、神経因子膀胱などにより膀胱に尿が残り、腎臓から流れてきた結石が残って大きくなることで結石ができます。