泌尿器がん
泌尿器がん
前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生します。早期に発見すれば治癒することが可能で、多くの場合比較的ゆっくり進行します。近くのリンパ節や骨に転移することが多いですが、肺、肝臓などに転移することもあります。
前立腺がんは、早期には自覚症状がほとんどありませんが、がんが進行すると次のような症状が現れます。
前立腺がんの決定的な原因は明らかになっておりませんが、遺伝や食生活、男性ホルモン、加齢などが関連すると考えられています。特に家族に前立腺がんの患者がいる人は注意が必要です。父親や兄弟が前立腺がんの場合リスクが2倍、2人以上いる場合は5〜11倍に跳ね上がることがわかっています。また、高齢者の発症率が高いことから、加齢も強く関わっているとされています。
その他、もともと前立腺がんは欧米人が多くかかる病気であったため、食事の欧米化により、近年、日本人も赤身肉や乳製品などを多く摂取するようになったことも前立腺がんの患者が増えてきた一因と考えられています。
主な検査はPSA検査、直腸診です。これらの検査で前立腺がんが疑われる場合には、経直腸エコー、前立腺生検などを行います。がんの広がりや転移の有無は画像検査で調べます。
膀胱がんは、膀胱にできるがんの総称です。膀胱がんの大部分である90%以上は、膀胱の内部をおおう尿路上皮にできる尿路上皮がんです。
尿路上皮がんは、がんが膀胱の壁にどのくらい深くまで及んでいるか(深達度)によって、筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性がんに分類されます。膀胱がんには、尿路上皮がんのほかに扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんなどの種類もあります。膀胱がんは、リンパ節、肺、肝臓、骨などに転移することがあります。
発生率は男性が女性の3倍と言われ、女性よりも男性がなりやすいとされています。また、60歳以上の高齢者や喫煙者、染料や特殊な化学薬品を扱う職業の方もなりやすい傾向があります。
膀胱がんによく見られる症状として次のものが挙げられます。
発症リスクとして最も大きな要因として考えられているのは喫煙です。男性の50%以上、女性の約30%の膀胱がんは喫煙により発生するという試算があります。また、ゴム、皮革、織物、色素工場で使用するアニリン色素、ナフチラミン、ベンチジンといった化学物質への慢性的な接触も膀胱がんの発症に関係するといわれています。
膀胱がんの検査では、まず尿検査を行い、尿の中に血液やがん細胞が含まれているかどうかを確認します。さらに、超音波検査や膀胱鏡検査を行い、がんであることがわかった場合には、転移の有無や膀胱内のがんの深さや広がりを確認するため、CT検査やMRI検査などの画像検査を行うこともあります。膀胱がんの確定診断のためには、治療を兼ねたTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を行います。
腎細胞がんは、腎臓にできるがんのうち、腎実質の細胞ががん化して悪性腫瘍になったものです。同じ腎臓にできたがんでも、腎盂にある細胞ががん化したものは「腎盂がん」と呼ばれ、腎細胞がんとは区別されます。腎細胞がんと腎盂がんでは、がんの性質や治療法が異なるためです。また、一般的に「腎がん」とは腎細胞がんのことをいいます。
腎臓は腎実質という尿をつくる部分と、腎実質によりつくられた尿が集まる腎盂という組織からできています。尿管は腎臓と膀胱を繋いでいる長い管で、左右に原則1本ずつあります。腎実質でつくられた尿は腎盂に集まり、排泄のため尿管を通って膀胱へと送られます。腎盂と尿管は上部尿路と呼ばれ、ここにできるがんは「腎盂・尿管がん」という1つのグループとして扱われます。腎盂から尿管、膀胱、尿道の一部へとつながる尿路の内側は尿路上皮(移行上皮)と呼ばれる粘膜でできています。この細胞から発生するがんを尿路上皮がんといい、腎盂・尿管がんのほとんどを占めます。腎盂は腎臓の一部ですが、「腎細胞がん」は腎臓から発生するがんであり、腎盂・尿管がんとは性質が違うため、別のグループとして扱われます。
腎細胞がんが大きくなると、血尿が出たり、背中・腰の痛み、腹部のしこり、足のむくみ、食欲不振、吐き気や便秘、おなかの痛みなどが生じたりすることもあります。気になる症状がある場合には、早めに受診することが大切です。腎細胞がんには、特徴的な症状がないため、小さいうちに発見されるものがほとんどです。肺や脳、骨に転移したがんが先に見つかり、結果として腎細胞がんが見つかることも少なくはありません。
腎細胞がんでは、CT検査、超音波(エコー)検査、MRI検査の画像検査で診断します。画像検査で診断ができない場合には生検を行うことがあります。血液検査は、全身状態や腎臓の機能を調べるために行います。
精巣がんは精巣にできる悪性腫瘍です。10万人あたりの発生率はおよそ1人でも決して多くはなく、男性の全腫瘍の1%程度です。20〜30歳代の男性においては最も多い悪性腫瘍といわれ、若年者に多いことが特徴です。
精巣がんに関連する病気として次のものが挙げられます。
陰嚢内に硬いしこりを触れます。感染症なので急性期には尿中に白血球を認めたり、痛みや発熱などの症状を伴ったりすることが多く鑑別可能ですが、慢性期には診断に苦慮することもあります。
炎症所見が弱いものや、結核性のものなど注意が必要です。
透光性検査や超音波検査で容易に鑑別可能です。
精巣がんによくみられる症状として次のものが挙げられます。
初期症状は、がんができた側の陰嚢(玉袋)の腫れや睾丸のしこりです。痛みは伴いません。
原因はわかっていませんが、停留精巣といって、精巣が陰嚢内におりず腹腔内に残っている患者さんでは、修復術施行の有無に関わらず一般男性に比べ精巣がんになりやすいといわれています。また、片側の精巣がん患者さんが、反対側に精巣がんを発生する頻度は20倍以上とされています。その他に、家族の病歴や外傷なども精巣がん発生のリスクとされています。
泌尿器科医が触診すると、精巣がんの可能性をある程度判断でき、その他の陰嚢疾患との判別に役立ちます。ずしりとした重みのある精巣を触れます。反対側の正常な精巣と比較し、精巣上体ではなく精巣そのものにしこりや腫れがあることを確認します。